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株式会社八天堂(広島県三原市)

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株式会社八天堂
(広島県三原市)

【写真】前田さん 八天堂は1933年(昭和8年)創業。くりーむパンをはじめとした食品の製造、販売を行っている。
八天堂の従業員数は201名(2022年11月1日現在)。
今回は、人事部部長の前田昌巳さんからお話を伺った。

社内独自の“八天堂BOOK”を使い、理念の理解と浸透を進めるなど、さまざまな健康経営の取組みを実施している

まず、健康経営の取組みについてお話を伺った。

「当社では、健康経営の視点として、“心身の健康”だけでなく“理念の理解と浸透”を重視しています。八天堂が何のために事業を行っているのかについて“理念の理解と浸透”を図り、その価値を知り共感を得てもらうことで、それを実現する一員として働くことを通じ、活力や熱意が感じられる状態を目指しています。八天堂の目指す姿を渦中で実践するためには、社員自身が業務遂行に必要なスキル、課題解決力、そして、明徳力を強化することが必要です。“心身の健康”と“理念の理解と浸透”が重なり合うことで“仕事への意欲”が出てきて、それが真の健康につながるという考え方のもと、OJTだけでなく、各種研修やリスキリング、定例の朝礼や木鶏(もっけい)会など様々な取組みを進めています。」

「当社の信条(クレド)は、『八天堂は社員のために お品はお客様のために 利益は未来のために』です。これは、当社が経営危機に陥った2007年頃に、現代表が、八天堂という会社がなんのために存在するのか、というところに立ち戻って生まれた言葉です。この言葉の中には、“社員が物心両面で豊かになり、かつ、世の中から必要とされる人になる。”という気持ちが込められており、当社が最も大事にしている価値観です。」

【写真1】八天堂BOOK 「こうした当社の考え方や価値観を整理した“八天堂BOOK”というものを制作し、入社時に全社員・スタッフに配っています(【写真1】参照)。常に身につけてもらえるように手帳サイズにしています。中のイラストは、当社の社員でイラストの得意な者が描いています。」

「この“八天堂BOOK”を従業員に浸透させる取組みとして、朝礼での勉強会があります。“八天堂BOOK”の内容一つひとつについて、代表が社員に発信したものを文字起こしした解説本があるのですが、それを朝礼の中で1つずつ順番に読み合わせしています。朝礼は毎日始業時に15分程度、部署ごとに行っていて、その7~8割の時間は“八天堂BOOK”の読み合わせとその日のテーマについて参加者の経験や感想を共有する時間に使っています。」

「毎年社員全員に行っている社内アンケートがあります。その中では、 “働く環境への満足度”、“上司からのサポート満足度”、“仕事への意欲”、そして、“八天堂クレド・理念の理解と浸透”の4つの切り口から17項目の質問をしています。今年度は、理念の理解と浸透度について訊ねる設問『八天堂の信条や理念を実現したいと思っていますか』については、77%の人が“非常にそう思う”、“ある程度そう思う”(YES)と回答していました。また、働く環境について訊ねる設問『上司や職場は私を1人の人間として気遣ってくれていますか』には84%がYESと回答していました。このような結果から、社員の中では当社理念の浸透程度は高い方だと考えています。」

「さらに、当社では、外部機関に依頼して実施している健康習慣アンケートと、協会けんぽによる体の健康に関するアンケート、そしてストレスチェックも毎年行っています。これらの健康面の結果とも併せて、社員個人の健康増進と、理念の理解と浸透、仕事意欲や上司からのサポート、そして、より良い職場環境づくりなどの活動を通じて、社員個々人の自己肯定感や自己効力感を高めることが当社の目指す姿です。」

従業員のメンタルヘルス不調の兆候に早期に気づき、丁寧にコミュニケーションをとりながら臨床心理士の相談につなげ、その後のケアの体制を整える仕組みが構築されている

次に、職場のメンタルヘルス対策に関する取組みについてお話を伺った。

「産業医のアドバイスを受けて臨床心理士のいる病院との提携を1年前から始めました。メンタルヘルス不調の兆候のある社員がいたら、臨床心理士のオンライン相談につなげています。この制度は会社が費用を負担して実施しています。」

「本人サポートの流れとしては、メンタルヘルス不調の兆候がみられたり、本人が悩みを抱えていたり、しんどくて辞めたいといった発言があったりした時、部門長から私に一報が入ります。臨床心理士につなげることが良さそうだと判断した場合は、本人の希望を確認した上で、臨床心理士につなげています。」

「臨床心理士につなげる際には、本人に所定の依頼票を記入してもらいます。現在の症状や、相談したい内容などを書き、個人情報の取扱いについても確認してもらっています。」

「面談後、臨床心理士から、対応のポイントなどをまとめた面談レポートを受け取り、本人サポートの参考にしています。初期の段階で、対応の方向性を、本人と会社が共有しながら進めることができる体制が整ってきたのではないかと考えています。」

「こうした仕組みについては、部門長のメンタルヘルス研修時に情報提供しました。部門長がいち早く気づき、初期段階のうちに対応できる力をつけることが大切だと考えているので、今後の研修の中でも続けていきたいと思います。」


カフェリエ


工場見学

【ポイント】

  • ①社内独自の“八天堂BOOK”を使い、理念の理解と浸透を進めるなど、さまざまな健康経営の取組みを実施している
  • ②従業員のメンタルヘルス不調の兆候に早期に気づき、丁寧にコミュニケーションをとりながら臨床心理士の相談につなげ、その後のケアの体制を整える仕組みが構築されている。

【取材協力】株式会社八天堂
(2022年12月掲載)